坂道の途中にあるこの家は、圧倒的な存在感を行き交う人々に与えている。
リビング天井の板張りが外部までつながり庇となることで、開放的な内部空間と印象的な外観デザインを目指した。
この家の中心に位置する階段は、単にフロアをつなぐだけの役割にとどまらない。
それは仕切りにもなり、舞台にもなり、オブジェにもなり得る。
生活動線などと連動しながら必要な空間同士をつなぐ役割を担う階段は、住空間の端にあるよりも中心にあるほうが動線はシンプルになりやすく、必然的に吹き抜けとなるので自然光を縦横断させるための光井戸としての恩恵を受けられる。
又、上り下りの途中で立ち止まったり、振り返ることで思いもよらないシーンを味わえるのもこの階段の醍醐味である。
階段は住宅の骨格でありながら、サイズとデザイン次第で生活シーンに様々な豊かさを与えてくれる存在になることが出来る。
施主の希望で階段の鉄骨フレームは鉄本来の黒皮仕上げとし、溶接跡やムラ・接合ボルトをあえて残すことで上品な色合いのリビングへのアクセントとなり、絶妙なバランスを空間に与えている。